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「はあ、はあ」
それはさうだ、永いことにちがひない、と房一はゆつくりと歩きつゞけた。多分、彼は彼で、自分のこれからの生涯を、その計りがたく、茫漠とした行手を見ていたのだらう。
このどこの誰とも判らない相手を満更知らぬでもないらしい様子を見せながら、房一は手早く書きこむと、
「あゝ、さうか。ふうん」
「すると、何ですか、十年契約といふやうなことにでもなすつたんですか」
「はあ、なるほど」
小谷は酔つて来たのだらう、何度も同じ手真似をして見せた。
このポインタアの雑種は、房一の往診にはどこへでもついて来た。いゝ路づれだつた。
「やあ」
「畜生、弱い奴だ」と、根津は笑った。
とにかく、それは遠い向ふで起つていることだつた。対岸の火事を見物するやうなものだつた。
「獲とれましたか」
「ふむ、さうか」